電子カルテ導入記 2002年1月 | ||
電子カルテをめぐる状況 診療録等の電子保存が法的に認められて以来、電子カルテには熱い目がそそがれています。各社があいついで電子カルテソフトを発売する一方、日本医師会はORCAを開発中(レセコン機能のみで電子カルテまでには至らないようですが)、各地で電子カルテによる診療情報共有実験を行われるなど活発な動きがあります。医療へのITの導入はまだまだ始まったばかりですので、今後どういうふうに変化していくかは先の読めない状態です。 レセコンのデータなら数ヶ月維持できれば問題ありませんが、診療録の場合は法的には5年は残しておかなくてはなりません。それぞれの会社のソフト自体でしか通用しないデータ形式では、導入後にソフトを他社のものに変える(変えざるをえない)場合に過去データを引き継げないと困ったことになってしまいます。また病診連携での情報共有の際にもすデータ間に互換性が必要ですが、今のところデータ規格は統一されていません。 いろいろな問題点もあり現時点での電子カルテの導入は、ある程度のリスクを伴うものと考えた方がよいと思います。 バックグラウンド 私のパソコン歴を紹介しておきます。N88BASICの頃、研究論文作成のためにちょっとした統計プログラムを使ったのがPCの使い始めでした。本格的に使い始めたのはNEC98のMS-DOSやDOS/Vが出てからで一太郎やLotus123、Dbaseなどのソフトを使っていました。その後WINDOWS3.1から95、98、Me、2000までもっぱらwindows系を使っています。Mac でもPersuationなどで学会・講演会用のスライドも作ったことがあります。 きっかけ パソコンは好きなので電子カルテには大いに興味を持っていましたが、まだまだ時期尚早と思っていました。兵庫県保険医協会で電子カルテの研究会があり、このときBMLのMedical Stationのデモを見て、現時点でも私が必要と思っている機能が備わっているソフトがあることを知りました。当時使用中のレセコンはNECのwindows95上で動いているIJI-αⅡというソフトで5年間とくに大きな不満もなく使ってきました。そのリース期間もそろそろ終わるし、思い切って電子カルテを導入してみようかと思いました。そこで各社の電子カルテのデモや試用版を使ってみることにしました。 選択過程 サンヨーや富士通など従来からの大手レセコンメーカーが自社のレセコンと連動する電子カルテソフトを販売しています。また臨床検査会社も、BMLのMedical Station を発売し雑誌広告の他、ことあるごとに展示デモをしたりと積極的に営業販売しています。Falcoもアシーニという子会社から(現在はFalcoのソリューション事業部)Super Clinicを、またこの7月にはSRLもアズウェルと組んでDoctor's Desk というソフトを発売しました。これらのうちBML、富士通、アシーニについては自院で個別にデモしてもらい、サンヨー、SRLは展示場でのデモを体験しました。これらのソフトはカルテの記載を簡略化するテンプレート作成機能、図の作成や画像の挿入、検査データの時系列表示、診断書や紹介状のなど各種書類の印刷などの機能を有しており、ユーザーインターフェイスも綺麗で見やすく、実用性は十分で機能に大きな差はないように思われました。ただし価格の点では、サンヨーや富士通では受付と診察室の2端末で500万から700万とかなり高価でした。 他に医師が開発して販売しているソフトがいくつかあります。連絡すると試用版を無料で送ってくれますので、自分のパソコンにインストールして使い勝手をみることができます。プロフェッショナルドクター(以下プロドク)はよく知られているソフトですが、試用版にかなり機能の制限があったせいもありますが使い勝手はいまいちでした。もうひとつはダイナミクスというソフトで、やはり使い勝手はスマートではありませんが内科系のユーザ?にはかなり好評であるとの噂を聞きます。これらは安価な上にPCの知識があれば自分でもカスタマイズが自由にできるなどのメリットがあります。 SUPER clinic に決めたわけ BMLがデモを見て以来積極的に営業攻勢をかけてきますし、整形外科への導入実績もあったのでかなり気持ちが傾きかけていました。SUPER clinicの事は知らなかったのですが、臨床検査はFalcoを利用していたので紹介されデモをしてもらいました。インターフェイスがカルテの2号様式に準じた構成になっているので違和感がなく、操作アイコンがわかりやすくwindows系の一般ソフトを使った事がある人なら、勘で操作しても使えそうなのが印象的でした。検査データもFalcoからオンラインで自動的にカルテに取り込めるし、高価ではありますが、サンヨー、富士通と比べれば安いことなどを考慮してSUPER clinicに決めました。 導入準備 平成13年9月に導入を決め契約。3ヶ月の準備期間を経て12月導入の予定でスケジュールを組みました。旧レセコンの頭書きデータ移行の他、SUPER clinic を自院に使いやすいようにカスタマイズするために、注射や処置、X線検査、処方のセット組、カルテ記載を簡略化するためのテンプレートやセット作成をはじめの1、2ヶ月で行いました。1週間ごとに担当者が宿題を持ってきます。宿題をさぼると導入時期がどんどん遅れてしまいますので、せっせと作業を行いました。 実際の使い勝手がわからないとどのようなテンプレートやセットを組めばいいのかイメージがわかないので、自分のノートパソコンにデモソフト(機能はほとんどフル)をインストールしてもらいました。レセコン機能の方は別にして、電子カルテとしての使い方はマニュアルなしで覚えてしまいました。 導入 ハードはDELLのデスクトップを受付、診察室に1台、処置室にノートパソコン1台としオンラインでのメンテナンスと検査データ受診のためISDNルータとスイッチングHUBをつないでwindows2000proffesionalでののLANを組みました。受付端末がサーバー的に働き、診察室端末をバックアップとしました。 11月後半の2週間を仮稼働期間として、従来のレセコンとSuper Clinicを部分的に併用しました。レセコンから移行できるのは住所氏名、カルテ番号、保険のデータだけなので病名や定期処方などは手入力で入れていかないといけないため、これがかなりの労力でした。しかし、Super Clinicはレセコンと電子カルテ一体型なので、どの端末も同じ機能を持っています(これは今後の使い勝手にも大きな意味があることを後に実感しました)。したがって、3端末で分担してやることができました。 12月1日(土)いよいよ本稼働。受付端末で受付・会計処理、診察室端末は事務員一人をクラークとして入力させる腹づもりでしたが、診察中に理学療法のみの患者さんが治療を済んでどんどん戻ってくるとそっちの方の会計処理が追いつかず、受付が大混乱、急遽処置室のノートを受付へ運び、理学療法や投薬のみの患者さんはこっちでどんどん処理をし、診察室での入力は私自身が行いました。 結局受付用端末をひとつ追加して、全部で4端末とし、診察室での入力は自分自身で、処置室は看護婦さんが入力し私がチェックして追補するようにしました。大きな混乱は1日のみで翌週月曜日からは、スムースに診療が行えるようになりました。 ソフト上のトラブルとしては、移行したデータのカルテ番号の桁数違いが問題で、一人の患者さんの会計処理ができなかったこと、保険が途中で変わった場合の処理がうまくいかない例が1例あったことで、どちらもオンラインのリモートメンテナンス(開発元のLABOTECHという会社が行います。)で解決できました。 運用上の問題としては初日の混雑のことと、こちらで組んだ注射薬剤のセット、X線のセットに間違いがあったため修正しなければならなかったことでした。 現況の運用状況 受付端末2台、診察室1台 処置室1台、理学療法や投薬のみの方は受付端末で処理し、診察室での入力は私が行っています。関節内注射やカルシトニンの注射などDoの処置内容は、看護婦が入力、追加入力と最終確認を私が行って登録(Suer Clinicにおける電子カルテへの確定入力のこと)しています。要するに紙カルテに記載するという手間がPCに入力するという手間になるだけで、手間が増えるという事はありません。カルテフォルダーは残して、紙カルテの頭書きや紹介状・保険会社への種々診断書のコピーなどの文書類をはさみこんでいます。これはまもなくスキャナーでとりこんで電子カルテにリンクして保存できるようになります。理学療法の方は指示箋を兼ねたリハカルテは残しています。このカルテをもって患者さんが牽引、マイクロ、低周波の場所へ移動し、リハ助手がこれをみて処置をしますので、ここははじめからペーパーレスにするつもりはありませんでした。そこでリハ室側には端末も置いていません。(うちはリハは2階部分になっています) Super Clinic 使用上の感想 診療録の入力については、テンプレート、セットの組み方で省力化できています。診察が非常に混雑したときに、頸、膝、腰など複数箇所の訴えのある患者さんがきたり、病歴がかなりややこしい患者さんの場合にはメモ書きして後で入力することもありますが、ほとんどの場合リアルタイムに入力する事ができます。紙カルテより内容が充実し開示しても恥ずかしくないものになるので、"患者本人であれば希望される方にはカルテをプリントアウトしてお渡しします(有料)"というふうにアピールしています。診察室のディスプレイは高価なペンタブレットにしたのですが、ペンでの操作は手書きで文字入力することはないし、必要な図はすでに入れてあし後から自作の図を入れることもできるので、診察中に図を書くこともない、ペンではうまく思ったところをポイントしてクリックするのが難しく、マウスの方がずっと使いやすいのでSuper Clinicの場合は必要ないと思います。処置やX線など点数にかかわる入力も手間なく行えます。事務員は紙カルテからの転記入力がなくなり楽になっていると思いますが、かといって医者の方の手間が紙カルテの時より多いとは思いません。保険点数にかかわる内容は、事務員が会計処理の時に最終チェックをしてくれています。 ソフトのバージョンアップや点数改訂、薬剤マスターの追加、Falcoから検査データの受信はラボリンクというボタンを朝一回クリックするだけで、勝手にオンラインですませます。ソフトのトラブルはリモートメンテナンスでうまく行きました。 もうひとつSuper clinicのメリットは電子カルテとレセコンがシームレスでどの端末からもカルテ操作、会計操作ができることです。サンヨーや富士通などのようにそれぞれの端末の機能が完全に分かれていると、少なくとも整形外科では非常にやりにくいと思います。もちろんいくつか改善してほしいところがありますが、今後一括Do(ある日のカルテ内容をすべて一気にDoで呼び出せ登録できる機能)などいろいろ機能アップしてくれるということで期待しています。 満足度80点という事にしています。 ご興味のある先生は、ファルコのホームページにリンクしています。 運用の実際についてお聞きになりたい先生は、メールで私にお問い合わせいただいても結構です。ただし、所属を明確にして下さい。質問内容によっては、ご本人かどうか確認させていただいた上で回答させていただくこともあるかと思います。 | ||